第参話「鳴らない、電話」 |
EPISODE:3 A Transfer |
赤木リツコ | おはよう、シンジ君。調子はどう? |
碇シンジ | 慣れました。悪くないと思います。 |
赤木リツコ | それは結構。EVAの出現位置、非常用電源、兵装ビルの配置、回収スポット、全部頭に入っているわね? |
碇シンジ | たぶん・・・ |
赤木リツコ | では、もう一度おさらいするわ。通常、EVAは有線からの電力供給で稼動しています。 |
非常時に体内電池に切り替えると、蓄電容量の関係で、フルで1分、ゲインを利用しても、せいぜい5分しか稼動できないの。 | |
これがあたしたちの科学の限界というわけ。・・・おわかりね? | |
碇シンジ | はい・・・。 |
では昨日の続き。インダクションモード、始めるわよ。 | |
目標をセンターに入れて。スイッチ・オン。 | |
・・・落ち着いて。目標をセンターに入れて・・・ | |
碇シンジ | スイッチ。 |
赤木リツコ | 次。 |
伊吹マヤ | しかし、よく乗る気になってくれましたね、シンジ君。 |
赤木リツコ | 人の言うことにはおとなしく従う、それがあの子の処世術じゃないの? |
碇シンジ | 目標をセンターに入れてスイッチ・・・。 |
目標をセンターに入れてスイッチ・・・。 | |
目標をセンターに入れてスイッチ・・・。 | |
目標をセンターに入れてスイッチ・・・。 | |
目標をセンターに入れて・・・ |
テロップ | 第参話 鳴らない、電話 |
TV | ではスタジオから、松崎の篠原夏子さ〜ん? |
・・・はい、おはようございます、篠原です!今朝はなんと・・・ | |
碇シンジ | ねえミサトさん、もう朝なんですけど。 |
葛城ミサト | ん〜ん。さっきまで当直だったの〜。今日は夕方までに出頭すればいいの、だから寝かせて〜・・・。 |
碇シンジ | じゃ、僕・・・。 |
葛城ミサト | 今日木曜日だっけ?!燃えるゴミお願いね〜・・・。 |
碇シンジ | はい・・・。 |
葛城ミサト | 学校の方は、もう慣れた? |
碇シンジ | ええ。 |
葛城ミサト | そう。・・・いってらっしゃい・・・。 |
碇シンジ | 行ってきます・・・。 |
葛城ミサト | はい・・・もしもし・・・。・・・何だリツコかぁ〜。 |
赤木リツコ | どう?彼氏とはうまく行ってる? |
葛城ミサト | 彼?ああ、シンジ君ね。転校して二週間、相変らずよ。・・・いまだに誰からも電話はかかってこないのよね・・・。 |
赤木リツコ | 電話? |
葛城ミサト | 必須アイテムだから、ずいぶん前に携帯渡したんだけどね、自分で使ったり、誰からもかかってきた様子、無いのよ。あいつ、ひょっとして友達いないんじゃないかしら。 |
赤木リツコ | シンジ君て、どうも友達作るには不向きな性格かもしれないわね。ヤマアラシのジレンマって話、知ってる? |
葛城ミサト | ヤマアラシ?あの、トゲトゲの? |
赤木リツコ | ヤマアラシの場合、相手に自分のぬくもりを伝えようと思っても、身を寄せれば寄せるほど身体中のトゲでお互いを傷つけてしまう。人間にも同じことが言えるわ。今のシンジ君は、心のどこかで、痛みにおびえて臆病になっているんでしょうね。 |
葛城ミサト | ま、そのうち気付くわよ、大人になるってことは、近づいたり離れたりを繰り返して、お互いが余り傷つかずにすむ距離を見付け出す、ってことに。 |
相田ケンスケ | ギュゥ〜ン、ドゥドゥドゥドゥドゥドゥドゥドゥドゥッ、ドゥァ〜ァァン!・・・何、委員長? |
洞木ヒカリ | 昨日のプリント、届けてくれた? |
相田ケンスケ | あぁ、ああ。いや、なんかトウジの家、留守みたいでさ。 |
洞木ヒカリ | 相田君、鈴原と仲良いんでしょ?二週間も休んでて心配じゃないの? |
相田ケンスケ | 大怪我でもしたのかなぁ? |
洞木ヒカリ | ええっ!?例のロボット事件で?テレビじゃ一人もいなかったって・・・ |
相田ケンスケ | まさか。鷹ノ巣山の爆心地、見たろ?入間や小松だけじゃなく、三沢や九州の部隊まで出動してんだよ?絶対、10人や20人じゃ済まないよ。死人だって・・・。 |
・・・ | |
トウジ! | |
鈴原トウジ | なんや、ずいぶん減ったみたいやなぁ。 |
相田ケンスケ | 疎開だよ、疎開。みんな転校しちゃったよ。街中であれだけ派手に戦争されちゃあね。 |
鈴原トウジ | 喜んどるのはオマエだけやろなぁ、ナマのドンパチ見れるよってに。 |
相田ケンスケ | まあね。トウジは、どうしてたの?休んじゃってさ。こないだの騒ぎで巻き添えでも食ったの? |
鈴原トウジ | 妹のヤツがな。 |
相田ケンスケ | ぁっ! |
鈴原トウジ | 妹のヤツが、瓦礫の下敷きになってもうて、命は助かったけど、ずーっと入院しとんのや、家んトコ、オトンもオジイも、研究所勤めやろ?今職場を離れるわけにはいかんしなあ、俺がおらんと、アイツ病院で一人になってまうからなあ・・・!しっかし、あのロボットのパイロットはほんまのヘボやなあ!無茶苦茶腹立つわ!味方が暴れてどないするっちゅうんじゃ! |
相田ケンスケ | それなんだけど、聞いた?転校生のウワサ。 |
鈴原トウジ | 転校生? |
相田ケンスケ | ほら、アイツ。トウジが休んでる間に転入してきた奴なんだけど、あの事件の後にだよ。変だと思わない? |
碇シンジ | んっ? |
洞木ヒカリ | 起立! |
先生 | えーこのように人類はその最大の試練を迎えたのであります。二十世紀最後の年、宇宙より飛来した大質量の隕石が南極に衝突、氷の大陸を一瞬にして融解させたのであります。海洋の水位は上昇し、地軸も曲がり、生物の存在をもおびやかす異常気象が世界中を襲いました。そして、数千種の生物とともに、人類の半分が、永遠に失われたのであります・・・。これが世に言うセカンドインパクトであります。経済の崩壊、民族紛争、内戦、その・・・ |
PCメッセージ | :碇君があのロボットのパイロットというのはホント?Y/N |
:ホントなんでしょ? | |
:Y/N | |
シンジPC | YES |
クラス一同 | ええ〜っ!? |
洞木ヒカリ | ちょっとみんな!まだ授業中でしょ?!席についてください! |
女子生徒 | ああまたそうやってすぐ指揮る! |
男子生徒 | いいじゃんいいじゃん! |
洞木ヒカリ | よくないっ! |
碇シンジ | そのぉ〜ぅ・・・ |
女子生徒A | ねえねえ、どうやって選ばれたの!? |
女子生徒B | ねえテストとかあったの? |
女子生徒C | 怖くなかった? |
女子生徒D | 操縦席って、どんなの? |
碇シンジ | あの、そういうの秘密で・・・ |
男子生徒 | ええ〜、何だよそれ〜 |
女子生徒 | ねえ、あのロボットなんて名前なの? |
碇シンジ | よくわかんないけど、みんながEVAとか初号機って・・・ |
女子生徒 | エヴァ!? |
男子生徒 | 必殺技は?! |
女子生徒 | うんうんうん! |
碇シンジ | っんと、なんとかナイフって言って、震動・・・超音波みたいので・・・ |
女子生徒 | んもうすごいわぁ!学校の誇りよねぇ! |
先生 | ・・・でありますから、ああ、では今日はこれまで。 |
洞木ヒカリ | 起立、礼!ちょっと、みんな最後くらいちゃんと・・・! |
碇シンジ | うっ、うわぁっ! |
鈴原トウジ | すまんなぁ、転校生。わしはお前を殴らなあかん。殴っとかな気が済まへんのや。 |
相田ケンスケ | 悪いね、この間の騒ぎで、アイツの妹さん、怪我しちゃってさ。・・・ま、そういうことだから。 |
碇シンジ | 僕だって、乗りたくて乗ってるわけじゃないのに・・・。 |
綾波レイ | 非常召集、先、行くから。 |
放送 | ただいま、東海地方を中心とした、関東、中部の全域に特別非常事態宣言が発令されました。速やかに指定のシェルターに避難してください。繰り返しお伝えいたします・・・ |
アイキャッチ | 新世紀エヴァンゲリオン 〜EVANGELION〜 |
アイキャッチ | NEON GENESIS EVANGELION EPISODE:3 A Transfer |
青葉シゲル | 目標を光学で捕捉、領海内に侵入しました。 |
冬月コウゾウ | 総員、第一種戦闘配置。 |
伊吹マヤ | 了解、対空迎激戦、用意! |
日向マコト | 第三新東京市、戦闘形態に移行します。 |
伊吹マヤ | 中央ブロック、収容開始。 |
中央ブロック、及び第一から第七管区までの収容完了。 | |
青葉シゲル | 政府、及び関係各省への通達、終了。 |
伊吹マヤ | 目標は、依然侵攻中。 |
現在、対空迎撃システム稼働率は48%! | |
葛城ミサト | 非戦闘員及び民間人は? |
青葉シゲル | 既に退避完了との報告が入っています。 |
放送 | 小中学生は各クラス、住民の方々は各ブロックごとにお集まりください。 |
テレビ | 本日正午に、東海地方を中心とした関東、中部の全域に特別非常事態宣言が発令されました。詳しい情報が入り次第、お伝えいたします。 |
相田ケンスケ | うぅっ、まただ! |
鈴原トウジ | また文字だけなんか? |
相田ケンスケ | 報道管制って奴だよ。僕ら民間人には見せてくれないんだ、こんなビッグイベントだっていうのに! |
葛城ミサト | 碇司令の居ぬ間に、第四の使徒襲来。意外と早かったわね。 |
日向マコト | 前は15年のブランク。今回はたったの三週間ですからねえ。 |
葛城ミサト | こっちの都合はお構い無し、か。女性に嫌われるタイプね。 |
冬月コウゾウ | ・・・税金の無駄使いだな。 |
青葉シゲル | 委員会から再び、エヴァンゲリオンの出動要請が来ています。 |
葛城ミサト | うるさいやつらね、言われなくても出撃させるわよ。 |
伊吹マヤ | エントリー、スタートしました。 |
LCL、転化。発着ロック、解除。 | |
碇シンジ | (父さんがいないのに、なんでまた乗ってるんだろう。・・・人に殴られてまで・・・。) |
相田ケンスケ | ねえ、ちょっと二人で話があるんだけど。 |
鈴原トウジ | なんや? |
相田ケンスケ | ちょっと、な。 |
鈴原トウジ | しゃあないなぁ。 |
・・・委員長ぉ! | |
洞木ヒカリ | 何? |
鈴原トウジ | ワシら二人、便所や! |
洞木ヒカリ | もう、ちゃんとすませときなさいよ! |
鈴原トウジ | で、なんや? |
相田ケンスケ | 死ぬまでに、一度だけでもみたいんだよ。 |
鈴原トウジ | 上のドンパチか? |
相田ケンスケ | 今度いつまた、敵が来てくれるかわかんないし・・・。 |
鈴原トウジ | ケンスケ、おまえなぁ・・・。 |
相田ケンスケ | このときを逃しては、あるいは永久にっ!なあ、頼むよ。ロック外すの手伝ってくれ。 |
鈴原トウジ | 外に出たら死んでまうでぇ。 |
相田ケンスケ | ここにいても分かんないよ。どうせ死ぬなら、見てからがいい。 |
鈴原トウジ | アホ。何のためにネルフがおるんじゃ。 |
相田ケンスケ | そのネルフの決戦兵器って何なんだよ?あの転校生のロボットだよ。この前もアイツが俺たちを守ったんだ。それをあんなふうに殴ったりして。それも二度も! |
鈴原トウジ | うっ、うぅ。 |
相田ケンスケ | アイツがロボット乗らないなんて言い出したら、俺たち死ぬぞ?トウジには、あいつの戦いを見守る義務があるんじゃないのか? |
鈴原トウジ | しゃあないなぁ。・・・お前ホンマ、自分の欲望に素直なやっちゃなぁ! |
相田ケンスケ | ふふっ! |
葛城ミサト | シンジ君、出撃。いいわね? |
碇シンジ | はい・・・ |
赤木リツコ | よくって?敵のA.T.フィールドを中和しつつ、パレットの一斉射。練習通り、大丈夫ね。 |
碇シンジ | はい。 |
葛城ミサト | 発進! |
相田ケンスケ | すごい、これぞ苦労の甲斐もあったというもの! |
おっ!待ってましたぁ! | |
・・・出た! |
オペレーター | A.T.フィールドを展開。 |
碇シンジ | 目標をセンターに入れてスイッチ、目標をセンターに入れてスイッチ・・・ |
葛城ミサト | 作戦通り。いいわね、シンジ君? |
碇シンジ | はいっ。 |
葛城ミサト | 馬鹿、爆煙で敵が見えない! |
碇シンジ | はあ、はあっ・・・ |
あっ! | |
鈴原トウジ | 何や、もうやられとるでぇ? |
相田ケンスケ | 大丈夫! |
葛城ミサト | 予備のライフルを出すわ、受け取って! |
・・・シンジ君?シンジ君!? | |
相田ケンスケ | あちゃ〜っ、やっぱ殴られたのが効いてるのかなあ? |
鈴原トウジ | う、うるさいわい! |
碇シンジ | はあ、あぁぁぁっ! |
青葉シゲル | アンビリカルケーブル、断線! |
伊吹マヤ | フィールド、0.2%ダウン。 |
日向マコト | EVA、内蔵電源に切り替わりました! |
伊吹マヤ | 活動限界まで、あと4分53秒! |
碇シンジ | うわっ! |
相田ケンスケ | こっちに来る! |
トウジ・ケンスケ | うわぁぁぁ! |
葛城ミサト | シンジ君、大丈夫、シンジ君!? |
・・・ダメージは? | |
日向マコト | 問題なし。行けます! |
碇シンジ | うぅっ、うっ!・・・あっ! |
葛城ミサト | シンジ君のクラスメイト! |
赤木リツコ | 何故こんなところに? |
碇シンジ | うっ、うわっ! |
鈴原トウジ | なんで戦わんのや?! |
相田ケンスケ | ・・・僕らがここにいるから、自由に動けないんだ・・・! |
伊吹マヤ | 初号機、活動限界まで、あと3分28秒! |
葛城ミサト | ・・・シンジ君、そこの二人を操縦席へ!二人を回収した後、一時退却。出直すわよ! |
赤木リツコ | 許可の無い民間人を、エントリープラグに乗せられると思っているの?! |
葛城ミサト | 私が許可します。 |
赤木リツコ | 越権行為よ、葛城一尉! |
伊吹マヤ | 初号機、活動限界まであと3分! |
葛城ミサト | EVAは現行命令でホールド、その間にエントリープラグ排出、急いで! |
・・・そこの二人、乗って! |
鈴原トウジ | うっ、なんや、水やないか! |
相田ケンスケ | カメラが、カメラがっ! |
伊吹マヤ | 神経系統に、異常発生! |
赤木リツコ | 異物を二つも、プラグに挿入したからよ!神経パルスに、ノイズが混じってるわ! |
碇シンジ | うっ、ううっ! |
葛城ミサト | 今よっ、後退して! |
回収ルートは34番。山の東側に後退して! | |
鈴原トウジ | 転校生、逃げろ言うとるで!転校生!? |
碇シンジ | ・・・逃げちゃ駄目だ、逃げちゃ駄目だ・・・! |
日向マコト | プログレッシブナイフ、装備! |
葛城ミサト | シンジ君、命令を聞きなさい!退却よ!シンジ君っ! |
碇シンジ | うわああああああああああああ!!! |
葛城ミサト | あの馬鹿っ・・・! |
碇シンジ | うわあああああっ!! |
ああああああああっ! | |
伊吹マヤ | 初号機、活動限界まであと30秒!28、27、26、25・・・ |
・・・14、13、12、11、10、9、8、7、6、5、4、3、2、1・・・。 | |
EVA初号機、活動停止。 | |
日向マコト | 目標は完全に沈黙しました。 |
碇シンジ | はっ、はっ、はっ、ぐっ! |
はっ、はっ、はっ、はぁっ・・・ |
鈴原トウジ | 今日でもう3日か・・・。 |
相田ケンスケ | 俺たちがこってりと叱られてから? |
鈴原トウジ | アイツが学校来んようになってからや。 |
相田ケンスケ | アイツって? |
鈴原トウジ | 転校生や、転校生。あれからどないしとんのやろ? |
相田ケンスケ | 心配なの? |
鈴原トウジ | 別に、心配ちゅーワケや・・・ |
相田ケンスケ | トウジは不器用なくせに、強情だからね。あの後、別れ際にでも謝っておけば3日ももんもんとせずに済んだのに。 |
・・・ほら、転校生の電話番号。心配だったら、かけてみたら? |
テロップ | つづく |
テロップ | 予告 |
葛城ミサト | 自分の心を克服できず、ミサトからも逃げ出すシンジ。だが組織は、少年をあっさりと連れ戻す。そこに優しい言葉は無かった。次回、「雨、逃げ出した後」。この次も、サービス、サービスぅ! |